禅研究会

Amazon・メルカリ・ヤフオクで検索してください!!

2023年を振り返って

 2023年は大変お世話になりました。

 2023年は1冊の史料集、1本の論文を出すことができました。数は少ないですが、両方とも手前味噌ながら時間と手間をかけた研究成果であり、なんとか世に送り出すことができたことに感慨無量の大晦日です。

 研究会としては、なんといっても『大唐名藍記・和漢禅刹次第〔中国部〕』を4月に刊行できました。この本を刊行するまでは死ねない、と本気で思って編集作業をしておりましたので、公開できたときにはとにかくほっとしました。ただ、正直なところまったく売れていません……涙 中国五山制度は日本にも大きな影響を与えましたが、その詳細を示す資料は中国においては現在までに見つかっておらず、本書所載の日本で撰述された「禅刹記」によってのみ知られます。南宋・元・明の仏教史についてのほんとうに貴重な史料集なのですが…… 図書館にリクエストしていただけますと大変幸いです。

 個人としては、「足利義満のうちなる中国皇帝 舎利信仰を手がかりに」を『アジア仏教美術論集 東アジアⅦ アジアの中の日本』(中央公論美術出版)に掲載していただきました。入稿が遅れ、時間切れとなってしまいましたが、北魏献文帝については、会田大輔氏『南北朝時代』(中公新書、2021)が、北魏の献文帝が退位して「太上皇帝」を名乗ったことが、持統天皇の「太上天皇」称号の参考(先例)にされたこと、世俗からの超越を図って譲位した可能性があること、皇帝が譲位後も実権を握る体制の初出が献文帝であると述べたことなどは、註に記すべきだったと反省しております(今後単著にまとめる際に補訂したいと思います)。本書の冒頭の宮治昭先生の総論「アジアの中の日本 インド・ガンダーラからの視座」と拙論をあわせてお読みいただけますと、拙稿で論じた日本五山禅僧がインド・中国をどのように認識していたかがより鮮明に見えてくるかと思います。私の「うちなる」という方法・問題意識は、大学時代に読んだ目崎徳衛『芭蕉のうちなる西行』の影響によるものです。今日まで自身に問いかけ考え続けている、室町時代の国家宗教的な役割を、禅宗の一派の臨済宗夢窓派が果たした諸相、そしてそれが可能であった歴史的・思想的な背景・基盤という研究テーマのうち、ある部分への私なりの回答として執筆いたしました。文字通りの拙い回答(論考)ですが、『アジア仏教美術論集』の最終巻「アジアの中の日本」に掲載していただいたことは本当にありがたく、感謝の気持ちでいっぱいです。

 研究生活の旅路の終わりを見据えて、来年もマイペースで活動してまいります。引き続きましてのご指導どうぞよろしくお願いいたします。

 みなさまよいお年をお迎えください。                西山美香